プロ野球で投手が打者の頭部へ死球を当てると、ほとんどの場合で投手は危険球で退場となります。
そのため「頭部死球=投手退場」と思われている方も多いと思います。
しかし実際はどうでしょうか?
実は、打者の頭部に死球を与えても投手が危険球で退場にならない事例があります。
しかも、この辺りの取り扱いはNPBとMLBで異なるのです。
この記事では、
- 投手が打者へ頭部死球を与えて危険球退場にならないケース
- NPBとMLBの頭部死球の取り扱いの違い
について解説します。
そもそも危険球退場とは?
そもそも危険球退場とは、野球規則にどのような記載があるのでしょうか?
実は、公認野球規則に危険球退場に関する規則はありません。
前提として、公認野球規則では、投手は打者を狙って投球すること、いわゆる故意死球は禁じられています。これを破って故意死球を狙うと、打者へ投球が当たったか否かにかかわらず、審判員は「投手」または「投手と監督」を退場させることができます。
しかしこれはあくまで故意死球に限った場合ですので、意図しない危険球に関するものではありません。
意図しない危険球に関する規定は、公認野球規則とは別に、NPB独自の内規(申し合わせ事項)に危険球退場が定められています。
なぜ危険球退場の内規ができたかについては、両チームで争いごとが起きたときに、死球による報復として使われてしまい、選手が危険にさらされてしまったためです。
そのため、セ・リーグ、パ・リーグそれぞれで打者に対して生命を脅かすような危険球が投じられた場合に、審判の裁量で退場を宣告できるようになりました。
これは危険球が故意であったか、否かについては関係ありません。
頭部付近への投球は、生命を脅かしかねませんので、ほとんどの場合で投手が退場となる訳です。
頭部死球で退場とならないケースとは?
では頭部死球で退場とならないのはどのようなときでしょうか?
その多くは、変化球がすっぽ抜けて球速が出ていなかったケースです。
危険球とは生命を脅かす危険な投球を指しますが、頭部死球の中には、変化球がすっぽ抜けて球速が遅く、打者が避けたが結果的に当たってしまうような事例があります。
もちろん頭部への死球ですから、必ずしも生命に影響を与えかねないか、と言われればそうは言い切れませんが、球速によるしきい値(○○km/h以上なら危険球といった基準)はありませんので、この辺りの判断は審判員がすることなります。
一定の球速が出ていて審判員が危険球と判断すれば危険球、そうではないと判断すれば危険球ではありません。
危険球でなければ、頭部へ当たっていてもそのまま死球として処理され、投手は継続して投球を続けることができます。
NPBとMLBの危険球の扱いの違いとは?
ではMLBではどうでしょうか?
実は、MLBではNPBのような危険球退場という規則はありません。
しかしMLBでも投手が退場となるケースがあります。
それは公認野球規則に則り、投手が故意に死球を狙った場合です。
MLBではNPBのように「頭部死球だから(ほとんどが)退場」とはなりません。
MLBでは投球が危険であったがどうではなく、投球が故意に打者を狙ったものかというものが退場や警告試合となる判断基準です。
その判断は審判員がしているため、死球の前に争いごとが起きている等、意図的に打者を狙ったと審判員が判断した場合、その投球が頭部付近であるか否かにかかわらず、審判員は退場を宣告します。
ここがNPBとMLBの違いと言えるポイントです。
まとめ
まとめです。
- 投手が打者の頭部へ投球を当ててしまい、頭部死球となっても退場とならないケースがある。
- 退場とならないケースは、(変化球のすっぽ抜け等で)球速が一定以上でておらず、審判員が「危険球ではない」と判断した場合である。
- NPBでは「投球が危険球か否か」で退場を判断するが、MLBでは「投球が故意で狙ったか否か」で退場を判断するという違いがある。
以上、危険球退場に関する雑学でした。
NPBとMLBでは、このようなルールの違いが結構ありますね。